花押の画像
Kao-花押-

花押とは花のように署名すること、
そして美しさは花押の形ばかりでなく、花押を使う人の生き方にも求められている

花押とは、自身の署名を他者と区別するために図案化したサインです。花が咲いたように見える書体から、「花押」という名がつきました。

もともとは公家や武家が文書の正当性を示すために用いられ、鎌倉・室町時代には武将たちが自らの権威や個性を示す象徴として発展しました。やがて戦国時代には、花押は単なる署名を超え、自己表現や美意識を体現するものとして重視されるようになります。
たとえば織田信長は、正しい政治が行われている世にのみ出現すると信じられていた想像上の生物「麒麟」の「麟」の字を用いた花押を使用しました。また豊臣秀吉の花押は、「悉(しつ/ことごとく)」という一文字をモチーフに描かれており、「悉国平定(すべての国を平定する)」という強い志が込められているといわれています。

現代でも、官僚が公文書に署名する際など、公的な場面で用いられています。

花押の魅力は、その造形美にあります。筆の流れや線の抑揚、余白の取り方に至るまで一つとして同じものはなく、その人の性格や精神性までも映し出すといわれます。そしてその美しさは、形の巧みさだけにとどまらず、花押を用いる人の生き方や品格によって、より一層際立ちます。

花押とはすなわち、歴史とともに磨かれてきた、日本人の美意識と自己表現の結晶なのです。

織田信長
豊臣秀吉

武田流花押

武田流花押とは、武田信玄により花押所に任じられた小池泉守胤貞によって、甲斐武田家一門のために考案・確立された花押形体です。
その発祥は明確な由緒を持ち、小池家において一子相伝で継承されてきた、450年余りの歴史を有しています。

現在に至るまで体系的に伝承されている花押の流派は、この武田流花押のみとされています。

武田信虎
武田信玄
武田勝頼