今こそ‘面白きこともなき世を面白く

モノ、サービスが加速度的に溢れる現在。
これらを受け入れるために自分自身をどんどんカラにしていった。
その空間にモノとサービスが隙間なく入り込む。
無尽蔵に沸いてきて、永久に与えられ続けると思い込んでいた。
ところが未知の疫病が襲ってきた。
過去とは比べ物にならない影響力で世界を席巻している。
そして今日、思い込みの日常が失われた。



「おもしろきこともなき世をおもしろく すみなすものは心なりけり」



唐突に話が変わるようだが、今日のテーマの句だ。
ご存じの通り高杉晋作の辞世だ。(と言われている)
短い人生を圧倒的な密度で駆け抜けた。
‘劇物の師’松陰の沸き立つ魂を受け継ぎ、雷電の如く、風雨の如しと評された。
辞世の解釈は様々あるが、私はこう理解している。

どんな事にだって楽しみは見い出せる。
病に苛まれていても、苦難にあっても、心の作り方えさえしっかりしていれば
世の中を楽しく生き抜けるんだ。

今自由を奪われて苦しんでいる人々の心の作り方に大きな示唆を与えてくれる句になるだろう。
疫病は多くの死者を出す憎むべきものだが、自分自身を見直す良い機会にもなると思う。
空っぽになった自身を見直す。

モノとサービスを与えられる自分からあらゆることに楽しみを見いだせる心づくりを。

モノとサービスを提供する側も、利益至上主義から離れる良い機会だろう。


ところで、彼の人生に大きな影響を与えたのは、松陰のほかには天然痘があったと思う。
現代では種痘のおかげで死に至る人はいないが、
彼の時代は、死亡率七割とも言われる恐ろしい疫病だった。
(その後すぐに種痘が持ち込まれるが)
これに十歳くらいで罹患し、運よく生き延びた。
生死、人生に対する考え方が、新しく力強く作られたはずだ。
その後の彼の人生は、多くの人が知る通り。


固執せず、広い視野を持ち、常に柔軟にアップデート。
藩からの預かり金で、ちゃっかり遊興もご愛敬。
一度決断すれば素早く徹底的に。
三十年に満たぬ人生に春夏秋冬。

おもしろきことも無き世を存分におもしろく生きた。


コロナ禍の影響は年初の想像を大幅に上回っている。
延期したオリンピックの開催も危ういだろう。
そんな時代を生き抜く為に、今の時間を有意義に使いたい。
晋作の精神に学んで。