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「天才に天職」 ~その壱~

ある職業が要求する‘すべての要素’を持って生まれ、‘その職業に就き’あくなき努力を重ね、
並ぶことのない実績を積み上げる。

 神に選ばれ、職業に選ばれる。

 天才に天職。

 時にそんな人物が生まれてくる。
彼はイチローと言う登録名で野球界にその存在を知らしめた。
抜群なセンスと華奢な体でメジャーリーグに渡った。

 筋骨隆々のパワータイプがフルスイングでホームランを打つ。
2m近い大男が160㎞を超えるストレートで三振を獲る。
そんな欧米人が持つベースボールの価値観とは全く違った発想で結果を出し、そして人々を魅了した。

 そのアメリカでの実績と軌跡からイチロー氏を『野球道の始祖』と言っていいのではないか。
私は勝手にそう思っている。
イチロー氏について研究したこともなく野球もど素人の私だが、勝手に考察しイチロー的野球道を分析してみたい。

 その道がたどり着く場所は。

 相手チームより1点だけ多く得点し試合を終了させるために、自分のやるべきこと、やれることをやる。
そのためにまずは、己をしっかりと深く知る。
分析した結果、その時その時に必要なことを実践する。
それを淡々とやり続ける。
これが私の考える、イチロー的野球道の基礎だ。

 そしてアメリカへ渡ったことにより、一層際立ったのがイチロー氏の背景にある『日本的なもの』だ。
バッターボックスでの立ち姿はまさに「侍」。

美しかった。

 また、道具の扱い方は職人的で実に丁寧だ。
使い方も徹底的に研究したであろう。

昔から日本と欧米では、道具に対するアプローチが大きく違う。
欧米では、まず道具を合理的に良くしていく。
そう。使いやすいように。

ところが日本人は多少使いづらくても、使い方や技術を徹底的に研究し磨いていく。ちょっと合理性に欠ける道具でも、だ。

それが「道」に通じていく。
イチロー氏の日本的なもの。

例えばバットの使い方。
バットをテニスのラケットと同様のレベルで使いこなす。
バットコントロールは、テニスのプレースメントレベルで考えていたと思う。

面の広いラケットと同様にバットを使いこなし、テニスと同じような細かいプレースメントを野球に持ち込んだのだ。(きっと)
バットの芯に当てるだけではなく、より多くのポイントを意識して利用する使い方だ。
左中間、二遊間といったレベルではなく、かなりピンポイントな狙いだ。
そしてそのバッティングは、次の動作や走塁を見据えたプレースメントの完成と位置付けていたと思う。

また、いつも戦略的で想定するプレーの確率を精査していた。
どうしたらよい結果を生むのか。
最適な自己の対応は何か。

爽快なヒットを狙わずに、わざと詰まらせて脚でファーストに生きる。
守備のリズムを崩すことまで考慮していたのだろう。
なんとも相手にとって嫌な選手である。
すべてのプレーがそのイチロー的野球道に基づくアウトプットであっただろう。

ずいぶんと長く楽しませてもらった。
時には野球道から外れた、エンターテインメント的なサービスも忘れずに。

勝手な分析で、本人はさぞかし不満かもしれないので直接会って話が聞ければ嬉しいのだが。

そうだ。

現役に復帰してくれないかなあ。

合同会社和の杜 代表


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